思わず観戦モードに入り徹夜してしまった選挙戦。
結果は予想通りの自民党の圧勝になった。
事の是非は聡明な皆さんの判断に任せるとして、 私は「ある党」の行く末を暗示する出来事に出会ってしまったお話をしよう。
それは選挙の二日前の金曜日の夜の事だった。
夜、10時過ぎ阪急沿線の小さな駅を出ると一人のタスキをした
候補者がマイクを持ち、駅の外灯の下に立っていた。
歳は30代半ば、小柄な人の良さそうなおぼっちゃま風な男である。
男は電車から吐き出されて来る通勤帰りのサラリーマンの集団が 改札に近づいてくる頃を見計らって声を出そうとした。
すると、そのサラリーマンの集団の間を縫って小柄な影が改札口から
飛び出し、男を取り囲んだ。5、6人のH学園という進学塾帰りの子供達だ。
たぶん、小学校5年生くらいであろう。
選挙権もないのに・・・。
子供たちは「おっちゃん、自民党、なぁ、自民党!」とか言いながら
男の腹のあたりを指でつつく。
男は「いや、民主党」と答える。
選挙権もないのに…。
「えっ、自民党とちゃうの?」
「だから、民主党・・・」
「えっ、自民党ちゃうん!」
「民主党!!」
「へーっ、これ何て読むの?」
「そやから、民主党って書いてあるやろ」
「ふーん、で、何党?」
というような、無意味な会話を繰り広げている間に、 サラリーマン達はそれぞれの家路につくために駅から 離れていった。
私はしばらく歩いてから振り返り、まだ、外灯の下で 子供たちにつつかれている男を見ながら 思わず笑ってしまった。
私は子供たちが、親が駅に車で迎えに来る間の、 最高の暇つぶしを見つけた事を知っていたからである。
・・・そして、男は落選していた。