コラム | 第3話 ウリボウは行く!

このシーズンになると六甲山系には「ウリボウ」が現われる。
ご存知だと思うがウリボウ(瓜坊)とはイノシシのチビである。
背中に瓜のような縞が残っているため、ウリボウと呼ばれている。

最近では山の方に餌が少なくなってきたのか、住宅街の周辺にまで、親子連れで降りてくることも珍しくない。

一度、そんな親子連れに犬の散歩途中で出会ったことがある。
後で、分かったことだが犬の糞を持って帰るスーパーの白い袋に興味を示したようだ。
どうも、イノシシにねだられてスーパーの袋から白菜の葉っぱとか取り出して上げる人がいるらしい。
それを覚えているのである。

腹が立つのはうちの犬の反応である。狭いハイキング道で私とイノシシがどちらも動けずににらみあっていた。
勿論、私としては犬の活躍に期待している。

ところが、うちの犬はやおら私の後ろに回ると後ろ足で立上り、私の背中を前に押したのである。
「ちょっと、苦手やから、あんたが相手し!」とでも言うように。

結局、崖を這いずり登り、イノシシ様に道をお譲りした。
腹立つ。

この前の休みには今年、初めて「ウリボウ」に出会った。
山沿いの道を散歩していたら、突然、目の前をダダダッと横切って行ったのである。

最初は子犬か何かと思ったのだが、その特徴のある柄と柔軟性のなさそうな身体の感じでウリボウと分かった。

おっ!と驚いていると、今度はダダダッと後方を横切っていった。
それからはあちこちでダダダ、ダダダと音がする。

たくさんのイノシシに囲まれたのかと思って足早に山を下っていると、同じく散歩の途中らしい初老の男性に出会った。

ど、どこやー!

ど、どこやー!

「危ないですよ。イノシシがウロウロしてます」と、私。
「あぁ、ウリボウが一匹、親とはぐれたみたいで、さっきから走り回っているんです。下のほうで親を見かけたんですけどね」
という答えが返ってきた。

おい、おい、ウリボウ。やみくもに走り回らず、立ち止まって、落ち着いてさがせよ。

ふっ、やっぱり、イノシシはイノシシやなぁ・・・
と感心した秋の暮れであった。