コラム | 第5話 イベントを企画する

先日、堺市の商工会の方とお酒を飲む機会があった。
といっても、偶然、飲み屋で隣り合っただけの話だが。

馴染みの店で一人で飲んでいると、
「この店は何がおいしいですか?」
と聞かれたので、
「何もおいしいものはありません。従って、ダイエットには最適です」
と教えてあげたら意気投合したのである。

堺は鎌倉から室町にかけて、倉庫業や海運業などの豪商達が集まり自治都市として繁栄していた。しかし、今や何も見るべきものが無い。何かイベントでもやって人を集めたいとお悩みであった。

「堺ゆかりの人には千利休や与謝野晶子、坂田三吉なんかもいます」
「そう、それですよ」
「はぁ?」
「サンキチギビングデイをやりましょう。あるでしょ、アメリカの感謝祭、サンクスギビングデイ。あれの日本版です。 将棋の坂田三吉に感謝する、サンキチギビングデイをやるんです」
「具体的には?」
むっとした口調で言われた。

「すみません。ただの思いつきだけで・・・。」

ビールをぐっとあおる。しばし、沈黙が流れる。

「ザビエル公園というフランシスコ・ザビエルゆかりの場所もあるんです」

おまえも、ザビエルやんか!

おまえも、ザビエルやんか!

「それ、それ。日本の奇祭『ザビエル祭り』をやりましょう」
「え、・・・具体的には?」
今度は喰いついてきた。

「参加する市民が全員、髪の毛をザビエルのようにして町を練り歩くんです。ほら、頭のてっぺんを円形に剃るやつ」

「ぷっ、それ、おもろいです」

「そうでしょ。老いも若きも、ザビエル髪にして大行進を行う訳です。TV局も取材にきますよ。それに、この日だけはハゲが優越感をもてるんです。
なんせ、天然ですからね」

「ハハハハハ、お腹痛い、絵が浮かぶ。おもろい」

堺の人はかけた眼鏡が曇るほど笑い転げていた。

・・・サンキチギビングデイと何処がちゃうねん。
と私は心の中で呟きながら、グビリとビールを飲んだ。