コラム | 第24話 ワンワンカー

阪神電車武庫川駅から武庫川団地に向かって、川に沿って支線が伸びている。

この武庫川線は2両編成のワンマンカーである。
ハゼ釣りに出かける時に利用するのだが、出発を待っているといつも女性の声で録音されたアナウンスが流れる。

「この電車はワンマンで運転されています」

これが録音のせいか、スピーカーの性能の悪さか、
「この電車はワンワンで運転されています」
に聞こえるのだ。

・・・いったい、どんなワンワンで運転しているのかといつも考えてしまう。

普通に運転したい!

「ふ、普通に運転したい!!」

扱いやすいのは「チワワ」クラスだと思う。
きっと新人の頃はチワワで運転するはずだ。

チワワの前足を持ってぶら下げ、アクセルのレバーにのせ、操作するのだ。

キャンキャンとうるさいのが欠点だ。乗客に動物虐待をしているのではないかと疑われてしまう。

そして、ベテランになるとさすがにスケールが違う。
セントバーナードを後ろから羽交い絞めにし、前足を掴んでレバーを操作するのだ。

時々、振り向いたセントバーナードに顔をべろべろとなめ回されてもびくともしない。安全運転だ。

欠点は夏場暑いのと、よだれまみれになることだ。

ワンワンカーは今日も行く!