コラム | 第29話 潮来(いたこ)のいたろう

今年の桜は早い早いと言いながら、結局、平年並みの開花であった。

昼休みに大川沿いの桜の下を散歩していると、どこからか「潮来(いたこ)のいたろう」という橋幸夫の歌が流れてきた。

懐かしいなぁと思っていたら、急に疑問が湧いてきた。

「潮来のいたろう、ちょいとになれば・・・」 の「ちょいと」って何?

「ちょいとしたもの」になればという事なのだろうか?

早速、ネットで検索してみた。
古い歌なので、なかなか情報が出てこない。

探し当てたのは「笑っていいとも」に橋幸夫が出演した時の会話の記録だった。

正しくは「潮来のいたろう『ちょいと見なれば』」であった。
どうも「潮来のいたろうをちょっと見てみれば薄情そうな渡り鳥であった」 という内容の歌詞だったのだ。

事実が分かったことよりも驚きだったのは潮来(いたこ)を恐山の「イタコ」と勘違いしている人が いることだった。

「イタコ」というのはご存知の方も多いと思うが、青森県、恐山にいる巫女のような職業の方で、死者の魂を呼び寄せ、語らせることができる。

「イタコ」のいたろう・・・って、巫女にそんなポップな愛称つけんやろ。
だいたい男やし・・・とつっこみたくなる。

イタコのいたろう生息地

イタコのいたろう生息地

私が今でも覚えているのは小学生の2、3年生の頃にTVに「イタコ」が出ておられて、マリリンモンローの霊を呼び寄せていらっしゃった。

イタコの方が白装束で身を震わせ、何か憑依したような瞬間、司会者が聞いた「マリリンモンローさんですね?」 「うんだ、わたば、マリリンモンローだ。」 と東北弁で即答された。

大人の世界の不思議を垣間見た一瞬であった。

恐山では今でも、「イタコ」の方に心霊グッズをあずけ、販売してもらっている業者がいるそうだ。

専門用語でこれを「イタコ販売」というらしい。