コラム | 第38話 台風の日には

わたしの後輩に今話題の家電メーカーS社に勤めているY君がいる。

Y君は現在、マレーシアのクアラルンプールに単身赴任し、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムと東南アジア圏を会社のために飛び回っている。

映るか?

彼の仕事はS社の製品をうるための販促企画である。
そのため、法被を来て、タイの片隅の街で盆踊りを行い、ジャパニーズお祭りフェスティバル、ウエルカム!!とかたぶん言っている。

彼の最初の赴任先は沖縄だった。沖縄全島の販促企画と実施が仕事であるため、現地スタッフの採用が欠かせない条件だった。

20数年前の沖縄には色々と濃いキャラクターを持った方が多かったようだ。
何せ、夕方になると「おーい、氷買ってこ~い!」という年長スタッフの号令のもと、毎日、宴会が始まるのだという。時間が経つにつれ、座は乱れ、歌う、踊るの大騒ぎ。
さすがの酒豪Y君もいつか体を壊すと思ったと言う。

そんなある日、強烈な台風が沖縄に接近して来た日の午後。


Y君「みなさ~ん、今日は台風が来ていますので、早めに帰って下さい。」
「大丈夫、昼休みにレンタルビデオ借りて、家に届けといたからさぁ。」
Y君「えっ?」
「所長、子供たちが退屈するさ。」
Y君「いや、それと台風とは…」
「だからぁ、停電になるさ。テレビ見れないだろ。子供、退屈するさ。だからビデオ一杯借りたさぁ。」
「所長、子供いないから、分からないさぁ。」
Y君「そうか、ハハハハハッーと。」

Y君は家電メーカーの社員として、つくづく本社に帰りたくなったそうだ。