コラム | 第34話 猫の贈り物

うちの家には犬が一匹と猫が二匹いる。

以前は犬とやたら大きな黒猫が一匹だったのだが、上の娘が子猫を拾ってきたのである。

目が大きく、日本の雑種猫と外国の長毛種の猫のハーフのようで、妙に毛がふさふさしている。

子犬用のキャリーバックに入れられて、地下鉄の駅に放置されていたらしい。
娘が朝の出勤時に見かけ、仕事帰りにもミャーミャーと鳴いていたので不憫に思って連れて帰ってきたのだ。

キャリーバックを開けると生後1ヶ月くらいのメスの子猫と鈴がひとつ転がり出てきた。
従って、猫の名前は「すず」と命名された。

既にトイレの躾もされており、実に飼いやすい猫だ。

現在は推定、7ヶ月程度に育っている。
やんちゃ盛りで、すぐに外に飛び出して行き、なかなか帰って来ないので探しまわらなければならない。

特に柿の木などの高いところに登って降りられなくなったりすると、ミャーミャーと鳴くのを梯子を持って行って救助しにいかなければならない。
誠に手のかかるやつである。

そして、不思議なことに外に出ていてもトイレは必ず、家に帰ってから猫用トイレで済ますのである。
これが、今回の悲劇の原因である。

日曜日、いつものように猫を探しに出た女房の「ギャー!」という叫び声が聞こえてきた。

様子を見に行くと、カーポートの横で女房が髪の毛を手で払いながら叫んでいる。

すず、でかしたぞ!!

「すず、でかしたぞ!!」

カーポートは、ゆるやかなカーブがついた樹脂性の屋根がついたタイプである。その上に「すず」が居た。

どうも、カーポートの上にいた「すず」はトイレに行きたくて、人を呼んでいたようなのだが、なかなか降ろしてもらえないので、我慢しきれずにその場で糞をしてしまったのである。

それは屋根のカーブに沿って転がり落ち女房の頭を直撃した。

「ヒェー」とか「ビェー」とか、意味不明の叫び声を上げて家に駆け込む女房を尻目に脚立を立て、「すず」を救助する。

「ぶふっ。『すず』、いけませんよー!」
と笑いをこらえながら、念入りに頭を撫でてやったのは言うまでも無い。